「伝統と技に学ぶ」勉強会その四 京指物編
木との対話からうまれる芸術
京指物の世界を学び
禅の世界に触れる
京都五山の一つ「臨済宗大本山・東福寺の即宗院」にて、公家・茶人好みといわれる繊細な技の数々が生きる作品を実際に見せていただきながら、貴重なお話を伺いました。
日時: 平成21年10月3日(土) 13:00~13:15受付
13:30~13:50法話、13:50~15:30京指物レクチャー、15:50~17:00座禅体験
会場: “臨済宗東福寺内 臥雲山即宗院”
京都市東山区本町15-813
講師: 井口彰夫 井口木工所 代表、京指物認定伝統工芸士
木を組む、彫る、曲げる、刳り貫く、削るといった木工芸を駆使する京指物の第一人者。
2002年大阪デザイナーズウィークにあわせて開催された「JAPAN DESIGN IDENTITY」
(暮らしのギャラリー)でも紹介される等各界から高い評価を得ている匠。
座禅指導: 杉井玄慎 臨済宗大本山東福寺塔頭 即宗院 住職、大本山東福寺 常任理事
日本では古えより、様々な工芸・芸術が生み出されてきました。
木と木をさし合わせて、組み上げることからその名前がついたと云われる指物の技法の始まりは、大変古く平安時代に遡ります。室町時代以後には専門の指物師が現れ、宮廷文化や茶の湯の文化確立とともに、高い工芸文化へと発展し「京指物」となりました。
この度は、京都迎賓館の調度創作にも携わり、また一方では、デザイナー喜多俊之氏とのコラボレーションやミラノサローネへの出展など、現代デザインの分野からも注目されている京指物の第一人者・井口彰夫氏に、大自然が育んだ木の魅力を最大限に引き出し、作品として新たな命を吹き込む「京指物」についてお話を伺いました。
① 指物の歴史・・・由来は、指し合わせるもの。
元々は建築の大工職が行っていた。
② 他との違い・・・内容的には同じ。
京指物 → 公家・茶人好み
江戸指物 → 徳川以降。武家・町衆好み
③ 京都木工協同組合の中での守備範囲の違い
●指物 ●彫物 ●挽物 ●曲物 ●箍物
④ 指物技術について
●調度指物 → タンス、棚、机など一般的家具類
●茶道指物 → 茶道道具
⑤ 現在の指物の状況・・・伝統産業法により指定
(100年の歴史を有するもの)
乾燥によるソリがある為、丸太はある程度わかるが、
板で購入する場合は、木は購入後5-10年位寝かして、
様子を見極めてから使用している。
木裏と木表については、拘らず木目の美しさに応じて
使い分けておられるそうです。
そういった面にも、温厚な柔軟なお人柄が表れている
ように思われます。
⑥ 今後の指物
100年前の作品は、当時の最新技術を駆使されていた。
故に、今の技術を使って、100年後どう評価されるか
ということが重要である。
公家・茶人好みといわれる繊細な技の数々が生きる作品を実際に見せていただきながら、貴重なお話を伺うことが出来ました。
今回は、京都五山の一つ「臨済宗大本山・東福寺の即宗院」にて開催しました。即宗院は通常非公開でありますが、特別に開催することが出来ました。
薩摩藩と密接な関係があり、江戸末期の安政の大獄の頃、篤姫が一時期、西郷隆盛をこの地にて匿ったと伝えられております。
勉強会に先立ち、「人の極みについて」のご住職による法話をお聞きし、心の持ち様を学ばせていただき、勉強会へむかわせていただきました。
勉強会後には重要文化財である中世以降現存する最大最古の禅堂にて“座禅”を体験させていただきました。型だけではない瞑想する際の心の持ち様や姿勢などをご指導いただき、”座禅”初体験の方も「禅の世界」に少しだけ触れていただくことができたようです。